人と地球の再生メディア

20 Sep. 2023

写真家 渡辺洋一 × 編集長 千代田高史

北海道・ニセコで考える 自然との対話、未来への想い

『(re)generate MAGAZINE RADIO(リジェネレートマガジン・ラジオ)』の第7回配信では、北海道ニセコ在住の写真家、渡辺洋一氏と編集長 千代田の対談をお届けします。

我々『(re)generate! MAGAZINE(リジェネレートマガジン)』を運営する株式会社ノマディクスのメンバーも、良質なパウダースノーを求めて何度もニセコに足を運び、スノーボードや雪板を楽しんでいます。2023年2月には、小売3店舗をひと月休業し、雪山に籠もって合宿生活を行うほどの熱の入れようです。

そんな私たちも大好きな ニセコのキーマンの一人、渡辺洋一氏。白銀の夢の世界というニセコエリアのイメージだけではなく、実際にこの地で暮らし、活動している渡辺氏に、変わりつつあるニセコの現状を聞いてみたいと思い、編集長 千代田との対談が実現しました。

スノーアクティビティが好きで、ニセコエリアに行ったことがある人はもちろん、有限な自然資源という観点から、ニセコに限らず全国規模で “変わりつつある何か”を掘り出すきっかけになるポッドキャストです。ぜひ音声も合わせてお楽しみください。

静寂な白銀の世界で自然と対峙する

2022年5月開催の沼津イベント (re)generate! では、渡辺洋一氏による 写真展『雪 森 – The Essence of the Winter Forest』を開催しました。イベントでは、各分野の第一人者やエキスパートをお招きし、トークショーやディスカッションを開催する中、渡辺氏には静かに語る写真という手段で、観る人に変わりゆく自然について問題提起ができるのでは、という期待から写真展開催を依頼しました。

2020年12月〜1月開催 新潟県南魚沼市 トミオカホワイト美術館にて 写真展『雪 森 The Essence of the Winter Forest』(写真提供:渡辺洋一)

森の中にみんなが集まれるような山小屋を作りたい

渡辺氏はスキーリゾートとして名高い北海道倶知安町に、自宅兼ギャラリー『ウパシギャラリー』を構えています。今回、渡辺氏ご自宅の庭をお借りして開催したポップアップイベントに合わせ、ポッドキャスト収録もウパシギャラリーにて行われました。

2023年8月 北海道倶知安町の渡辺洋一氏の自宅『ウパシギャラリー』で開催したポップアップイベント (撮影:渡辺洋一)

“蝦夷富士” 羊蹄山を臨むウパシギャラリーの大きな窓は、極寒地ニセコの冬に耐える三層構造。断熱効率と空気の流れを考えて設計されたこだわりのご自宅は、冬は暖かく、夏は風が抜けて心地よく、周囲の森の中に溶け込む山荘のような佇まいです。16年前の建築当時にはまだ珍しかった、エネルギー効率が高く環境負荷の少ない家をデザインしてくれる理想の建築家は、札幌の街を歩いて見つけ出したと言います。

札幌の街中を歩いて見つけた理想の家の建築家に連絡をとり、設計を依頼したこだわりの家
大きな窓でも暖房効率は高く、冬でも室内は暖かい(撮影:渡辺洋一)

「森の中にみんなが集まれるような山小屋をつくりたい」

渡辺氏が語った夢は、売却を渋っていた土地所有者の心も動かしたそうです。編集長 千代田も「兄貴分」と慕う渡辺氏の周囲には、自然と人が集まります。夢を語り、自らの足を使ってチャンスを掴みに行く渡辺氏のエピソードには、私たちも背中を押されるようです。

ウパシギャラリーからは蝦夷富士、羊蹄山も臨める(撮影:渡辺洋一)

スキーを生業にして自由に生きる:写真家への転身

写真家に転身するきっかけは、まだ会社員だった20代の頃。札幌に転勤となった渡辺氏は、趣味のスキーを満喫すべく、大雪山やニセコに通いつめました。そしてスキーを生業にして自由に生きる友人たちと出会い、触発されたと言います。

その後、会社を辞めてアラスカなど世界中を旅し、大斜面を滑るスキーヤーを撮影した写真集『雪山を滑る人 – Gliders of The Snow Mauntains – 』を2009年に出版。人と雪との関わりを撮る写真家としてのキャリアがスタートしました。この当時の経験は、現在、冬の森をテーマに開催している写真展『雪 森 ー The Essence of the Winter Forest』シリーズの原点にもなっています。

2020年12月〜1月開催 新潟県南魚沼市 トミオカホワイト美術館にて 写真展『雪森 The Essence of the Winter Forest』(写真提供:渡辺洋一)

中身を知ってもらうには、まず見た目から

2015年より渡辺氏が発行するスノーカルチャーマガジン『Stuben Magazine(スチューベンマガジン)』は、装丁や紙質など、渡辺氏の都会的なセンスが垣間見えます。スノーカルチャーが直面する環境問題など、本質的で深い記事をていねいな取材と上質な写真とともに掲載しながらも、「装丁で魅せて手にとって貰えなければ始まらない」として、アートディレクションにもこだわっています。

世界有数の雪国・日本のスノーカルチャーを北海道ニセコから発信する『Stuben Magazine(スチューベンマガジン)』

隣人に声をかけ、身近な自然を再生する

地域のキャパシティを大きく超えたリゾート開発により、ニセコエリアはいま雪も水も不足し、温泉資源も枯渇し始めています。地元住民の日常生活や自然環境に大きな負荷を与えるオーバーツーリズムの現状は、緊急の課題としてニセコ住民とそのエリアで遊ぶ人たちの目前に突きつけられています。

渡辺氏の提案は、まずは自宅や隣人の庭から未来のための行動を起こすこと。庭に生える草木を学んで理解し、土地や気候に適合した植生を育てていくことが、10年後の環境を作ります。ニセコの自然に憧れて海外の都市部から移住してくる隣人にも “おせっかい”に声をかけ、未来の庭を一緒に作っているそうです。

自然との共生を自分ごととして小さな行動を起こすヒントが、渡辺氏の言葉の中にあります。ぜひポッドキャスト全編でお楽しみください。

自宅庭の短い夏を季節の花が彩る(撮影:渡辺洋一)
10年後の自然は庭先から始まる。土地に根ざした植生を学び育て、隣人への手助けも惜しまない(撮影:渡辺洋一)

Stuben Magazine

ホームページ:https://stuben.upas.jp/
Instagram:@yoichiwatanabe_niseko / @stubenmagazine

プロフィール

渡辺洋一 Yoichi Watanabe

1966年 静岡県生まれ埼玉県出身。幼少期よりスキー中心の冬休みを過ごし、スキーと雪に魅了される。1992年北海道札幌市へ移住、写真を撮り始める。1996年ニセコエリア倶知安町に移る。その頃から写真家として世界の名峰をスキー滑走しながらライダーの雪上写真を撮影し、多岐のスノーブランドの広告写真や専門誌に発表。2007年にニセコウパシギャラリーと自宅をニセコに建設。地場材の使用、高気密断熱の自然環境を考慮にしたエコハウスは周囲の森に溶け込んでいる。早い時期から住環境や自然との共存をニセコで実験している。2015年にはスノーカルチャーマガジン「Stuben Magazine」を編集者の尾日向梨沙と創刊。国内外の雪国の風土を題材に刊行。また、スキーガイドとして雪の森をゲストと滑り続ける。2020年2月、写真集「雪 森」出版。同年12月、南魚沼市「トミオカホワイト美術館」での写真展を開始、ニセコ「Gentem Café & Gallery」や東京「Slope Gallery」を経て、2022年5月『(re)generate! 1』にて「雪 森」展を開催。

TOPページへ

RELATED ARTICLES 関連記事

09 Nov. 2023

Nomadics, inc 共同代表 千代田高史 × 小峯秀行

はじめてのDIY感謝祭を終えて

『(re)genereate! MAGAZINE RADIO(リジェネレートマガジン・ラジオ)』第9回目も、当マガジン編集長の千代田高史と株式会社ノマディクスを共同経営する小峯秀行両氏によるクロストークです。同社が2023年10月23日に東京・高尾山口で開催した「Nomadics Festival ’23( #ノマフェス)」を振り返ります。 編集長 千代田 […]

06 Oct. 2023

Nomadics, inc 共同代表 千代田高史 × 小峯秀行

正解を超える価値の創造 – Do It Yourself

両氏が代表を務める株式会社ノマディクスは、本業の輸入卸・小売業の舞台裏で、自社店舗などの内装工事を自分たちの手で行なっています。そのDIY工事の頻度と完成度は、「もはや本業なのでは?」と内外で噂されるほどです。 ポッドキャスト前半では、9月に東京・北青山に開業した新店舗内装DIYの裏話も飛び出します。そして後半では、10月22日(日)高尾山口で開催が決定し […]

20 Sep. 2023

写真家 渡辺洋一 × 編集長 千代田高史

北海道・ニセコで考える 自然との対話、未来への想い

『(re)generate MAGAZINE RADIO(リジェネレートマガジン・ラジオ)』の第7回配信では、北海道ニセコ在住の写真家、渡辺洋一氏と編集長 千代田の対談をお届けします。 我々『(re)generate! MAGAZINE(リジェネレートマガジン)』を運営する株式会社ノマディクスのメンバーも、良質なパウダースノーを求めて何度もニセコに足を運び […]