人と地球の再生メディア

03 Feb. 2022

(re)generate! MAGAZINE RADIO

「ごみ」から学ぶ、心地よい「暮らし」のはじめかた

『(re)generate! MAGAZINE RADIO (リジェネレートマガジンラジオ)』は、”人と地球の再生”をテーマにお届けする(re)generate!の音声プログラム。地球環境や人間の身体を軸に、新しい生活習慣やムーブメントなど、ワクワクする興味の種をマガジン編集部が探っていきます。


「みなさんは『ごみ』と聞いて何色を連想しますか?」


こんな問いから始まる『(re)generate! MAGAZINE RADIO』第一弾のポッドキャストは、昨年4月に静岡県沼津市で開催したイベント「(re)generate!」のトークショーを録音・編集したものです。スピーカーの「上勝町ゼロ・ウェイストセンター」大塚桃奈さんの同意を得て、再編成し公開します。


さっそく今日から取り入れられそうな具体的なアクションプランや、目からウロコのアイデアが満載です。大塚さんの心地よい声のトーンの中に含まれる力強いメッセージに、きっと希望を見いだせるポッドキャストです。ぜひ聴いてみてください!

四国一小さな上勝町から「ゼロ・ウェイスト」を広げ、
これからの暮らしのヒントを一緒に探りたい

その他の音声プラットフォームはこちらから
大塚桃奈さん登壇の様子
2021年4月に静岡県沼津市 INN THE PARKで開催したイベント『(re)generate!』トークショーにて

トークショーのスピーカーは徳島県の「上勝町ゼロ・ウェイストセンター」で働く大塚桃奈さん。2003年に日本で初めて自治体として「ゼロ・ウェイスト(ごみをゼロにする)宣言」を出した、徳島県上勝町のごみ分別センターが勤務先です。

上勝町ゼロ・ウェイストセンター
大塚さんの勤務先「上勝町ゼロ・ウェイストセンター」。町民自らごみを持ち込み45種類に分別する。
Photo by Transit General Office Inc. SATOSHI MATSUO

収録当時、まだ社会人2年目だった彼女の社内での肩書は「CEO」。ただし、「最高経営責任者」ではなく「Chief Environmental Officer(最高環境責任者)だとのこと。

「ごみをなくすこと。それが、私の夢です。」

穏やかで、でも力強い声でそう語る彼女が、パソコンメーカー「HP」のCMに登場していたのも記憶に新しいかもしれません。

ごみの行き先をたどると、
暮らしの中に潜むあらゆる選択肢が浮かんでくる。

上勝町の住民の半数は65歳以上。さらに2040年には、現在の人口1500人がさらに半分になるそうです。いわゆるZ世代にあたる20代前半の大塚さんが、高齢化と過疎化がすすむ上勝町に移住した背景には一体何があったのでしょうか。そして、ファッションデザイナーにあこがれた少女の新たな夢が、「ごみをなくすこと」に変わった経緯とは?

ポッドキャストでは、彼女が少女時代に経験した「夢はかなう」という原体験から、上勝への移住を決意するまでの興味深いストーリーも語ってくれています。

大塚桃奈さんトークショー登壇の様子
『(re)generate!』トークショーより。制服の背中には大きなWHY(なぜ)が印刷されている。

燃えるか、燃えないか、ではなく
リサイクルできるか、できないか

日本では排出されるごみの8割が焼却されています。
一方、上勝町ではごみを45種類に分別し、そのリサイクル率は実に80%。
プラスチックは5種類、紙は9種類にも分別し、資源化はもちろん、町の大切な収入源にもなっているそうです。

これだけ聞くと、「なんだか大変そう」と腰が引けてしまうかもしれません。

しかし、大塚さんのトークショーのタイトルは表題にある通り『「ごみ」から学ぶ、「心地よい暮らし」のはじめかた』。上勝町民にとって、ごみと向き合うことと心地よい暮らしは、地続きにあるのです。ゼロ・ウェイスト宣言以降の町民による実績は、「大変そう」という消極的な感情を上書きするだけの説得力があります。

昨年4月開催のイベント (re)generate!にて、上勝町ゼロ・ウェイストセンターを再現するために準備したごみ分別パネル。
当日はコロナ感染拡大防止に関わる諸事情により、あいにく実現しなかった。

日々何気なく捨てているごみを見つめなおすことは、
自分の生活を見つめなおすこと

上勝町ゼロ・ウェイストセンター上空から
上からみると「?」の形をした上勝町ゼロ・ウェイストセンターは2021年日本建築学会賞を受賞した。
Photo by Transit General Office Inc. SATOSHI MATSUO

大塚さんが働く「上勝町ゼロ・ウェイストセンター」は上から見ると大きな「?」の形をしています。

聞けば、この形になったのは後から増設した結果だそうですが、奇しくも私たちに多くの「?」を投げかけてきます。

なぜものを作るのか?
なぜそれを買うのか?
なぜそれを使うのか?
なぜ捨てるのか?

そして

なぜ人口の半数が65歳以上という山あいの小さな町で、ゼロ・ウェイストが始まったのか?
なぜ町民はそれを続けることができているのか?

さらに

今日から自分にできることは何か?

上勝町の住民たちは、そして大塚さん自身は、なぜこれらの正解のない問いに向き合い続けることができたのでしょうか。

ポッドキャストでは、遠すぎる目標に思える「ゼロ・ウェイスト」を暮らしに取り入れるキーワードを2つ紹介しています。答えが気になる方は、ぜひポッドキャストを聞いてみてください。

上勝町ゼロ・ウェイストセンター
古材を組み合わせた窓には人口減で窓からもれる光が減っても、町の灯火は消さないという願いもこめられている。
Photo by Transit General Office Inc. SATOSHI MATSUO

「正解のない問い」は、みんなで一緒に考えたい

「ゼロ・ウェイストって、どうしても正義を振りかざしてしまいがち」と大塚さんは言います。しかし、彼女のトークは、そんな押しつけがましさは感じさせません。むしろ、ごみのゆくえを想像して行動することは、「日々の生活を自分の手に取り戻す」ことであり、「自分の未来を人まかせにしない」という強い自立心を感じました。

そして、正解のない問いを一緒に考え続けることにより、人との見えるつながりが生まれること。それが、未来だけでなく「今日」の暮らしまでも、心地よくしてくれるという、力強いメッセージを受け取りました。

ごみ分別センターに併設された「HOTEL WHY」に宿泊すると、スタッフによるゼロ・ウェイスト&施設案内のスタディツアーに参加して、上勝町民の取り組みを追体験できます。「具体的なアクションプランを知りたい!」という方は、ぜひ一度「上勝町ゼロ・ウェイストセンター」を訪れてみてください。

ホームページ:https://why-kamikatsu.jp/
宿泊予約サイト:https://www.chillnn.com/177bcc0b991336
Instagram:@why.kamikatsu

HOTEL WHY
町中から集まった古い建具がパズルのように組み合わされている。窓から見える徳島の山並みが美しい「HOTEL WHY」
Photo by Transit General Office Inc. SATOSHI MATSUO

プロフィール

大塚 桃奈

株式会社BIG EYE COMPANY・Chief Environmental Officer(CEO)
1997年生まれ、湘南育ち。「トビタテ!留学JAPAN」のファッション留学で渡英したことをきっかけに、服を取り巻く社会問題に課題意識を持ち、長く続く服作りとは何か見つめ直すようになる。
国際基督教大学卒業後、徳島県・上勝町へ移住し、2020年5月にオープンした「上勝町ゼロ・ウェイストセンター」に就職。現在、山あいにある人口1,500人ほどの小さな町で暮らし、ごみ問題を通じて循環型社会の実現を目指して同施設の運営に携わる。併設するHOTEL WHYでは、宿泊を通じて上勝での暮らしを体験でき、チェックイン時にはスタディツアーを開催している。

学生時代に翻訳に携わった”エシカル消費”がテーマの絵本「Are You Ready? The Journey to the Veiled World(末吉里花:著、中川学:絵)」は、山川出版社より好評発売中。また、日本で最も美しい村連合のひとつでもある上勝町の魅力を、季刊誌で発信もしている。

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